こんにちは!クロスベイスのスタッフとして今年4月から働かせていただいています、大阪大学人間科学部人間科学科人間科学コース三回生の森口和奏です。人間科学コースと聞いて首を傾げる方は多いと思います。簡単に言えば、人間科学部の授業を英語で受講することができる学部なのですが、同じ阪大生でも知っている人が少なく、「へぇーそんな学部があるんだ」というのが大抵の人の反応です。内心悲しい部分もありながら、3年目になった今は自分が宣伝すればいいかという気持ちで説明しています。
人間科学部ではあらゆる側面から「人」を学ぶということなのですが、私は国際関係、主に日韓関係に興味を持っています。10歳頃から韓国が好きで、音楽やバラエティー番組などあらゆる面から韓国文化に触れていたこともあって、勝手に韓国へ対して親近感を持っていました。しかし民間レベルの文化交流が盛んになる一方で国家レベルでは山あり谷ありというのも現実であり、私の知っている大好きな韓国とニュースで見る韓国に大きなギャップを感じていました。
そんな中で国際関係に大きな魅力を感じさせられたのが中学と高校の時に参加した模擬国連でした。当初は授業の一環で年に一回、割り当てられた国の代表となって他校の生徒と討論をする機会が作られていました。緊張しがちで人前でスピーチをするのがあまり好きではなかったので、2年間嫌々行っていたのを今でも覚えています。しかし、ディベートされた議題や問題解決へ向けて話し合う雰囲気は学ぶことが多く、自分も上手になりたいと思っていたのも確かです。気づけば高校二年生の時に韓国で開催された模擬国連に自ら手を挙げて行っていました。大した活躍もせずに終わってしまったのですが、参加した事によって自分が受けた衝撃は大きく、将来国際的な場で日韓関係を改善する活動をしたいという夢を持つようになりました。
クロスベイスで子ども達と関わる上で、私の研究分野が直接役立つかは、当初少し不安でした。しかし、こちらで活動し始めて2週間たった今、私自身の関心や価値観、アイデンティティを見つけることができた環境がクロスベイスの環境とよく似ていると感じています。
私は小学校最初の2年をニュージーランドで過ごしました。見た目も日本人、母国語も日本語。ニュージーランドでは日本人ですと当たり前のように自分を紹介し、自分の日本人としてのアイデンティティに1ミリの違和感も持っていませんでした。しかし、日本の小学校に通いだすと、周りの友達には何かちょっと違う日本人、と思われているような気がしました。じゃあ私は一体何人なんだろう。自分がニュージーランド人だとも思ったことがないし、海外で過ごしたのはたったの2年間だったのに、周りの視線が妙に違うような気がし、その視線を気にしている自分がいました。
そんな私が自分らしいと思えるようになったのが5年生から高校卒業まで通ったインターナショナルスクールでした。一つの文化に当てはまらない子どもたちが多く集まり、みんな違うストーリーがあるのが当たり前、違うことで特別扱いされない、そんな環境がそこにはありました。日常的に多分化に触れ、互いの相違点を見つけることで自分の価値観や関心、強みなどを自然に把握することができ、在学した7年間は「日本人」だけではなく「自分」であることはどういうことなのかを整理するプロセスになっていたと思います。一つの文化に属しない、属する必要もない、これこそが私のアイデンティティなんだなと思えるようになりました。
クロスベイスでは同じような風が吹いています。様々な文化的背景からくる子ども達が集まり、自然に互いの違いを受け入れる環境があります。中国で遊んでいたゲームやフィリピンで食べていた屋台料理。子どもたちは皆自分の文化についてよく話してくれます。日本文化に少しずつ慣れながらも、こうした会話や環境を通して自分のルーツを忘れずに、自分にしかないアイデンティティを見つけることができるのではないかと考えます。クロスベイスの一員として、勉強のサポートをしながらも、今彼らが持つ多様性を全力で大切にしていきたいと思います。