大阪市区生野区において、さる6月30日(日)、IKUNO・多文化ふらっと発足記念シンポジウム「大阪市生野区 市民主役で多文化共生のまちづくりに挑戦する!」が、旧鶴橋中学校体育館で開催された。大雨が降りしきる中、約150名の市民らが参加して、熱気あふれる議論を行った。生野区は全国の自治体のなかで、外国籍住民比率が都市部で日本一であり、現在63カ国にルーツを持つ外国人がともに暮らす多国籍・多民族化が進むまちだ。
「多文化ふらっと」は、自発的な市民一人ひとりを構成員とし、「人権尊重を基調とした多文化共生もまちづくり」をめざし、人的交流と論議、情報交換と共有、学びの場を保障することで、「多文化共生の生野区モデルの構築」に寄与することを目的としたプラットホームだ。当法人の宋悟・代表理事が事務局担当を担っている。
1部の記念講演では、大阪大学大学院准教授の高谷幸さんが、「外国人労働者の受け入れと、今後の地域まちづくり」をテーマに、外国人労働者の受け入れ拡大と日本の移民政策、移民政策不在の帰結としての移住者の格差と差別の放置状況などについて分かりやすく解説した。高谷さんは最後に、世界で取り組まれている「我々は社会を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)の普遍的な価値のひとつである「誰一人取り残さない」という理念が、多文化共生のまちづくりにとっても重要であることを強調した。
2部のデスカッション「<次の一手>を考える」では、生野区在住の在日コリアン、ニューカマーのインドネシア人に加えて、研究者、山口照美・生野区長がパネリストとして登壇し、3つの具体的なプロジェクトの提案が行われた。第1に、川端麗子さん(神戸女子大学准教授)が、生野区の多文化共生のまちづくりニーズを探り、施策にまとめるための「調査・提言」プロジェクトを提案した。
第2に、ディアパリ・アンディカさん(生野区まちづくりセンター)が、生野区で暮らす外国人と地域社会の日本人との多様な出会いと交流の機会をつくる「多文化イベント」プロジェクトを提案した。具体的には昨年12月生野区役所が主催し、700名程の外国人と日本人が参加した「TATAMI TALK」イベントの成果を引き継ぎ、官民協働で実施することに言及した。
第3に、生野区在住の金相文さん(公益財団法人とよなか国際交流協会理事)が、「多文化共生の拠点づくり」プロジェクトとして、生野区多文化交流センター(仮称)の設立を提案した。今後自発的な市民の参加を得て、この3つのプロジェクトごとに進めていくことになる。
「IKUNO・多文化ふらっと」は、スタートラインに立ったばかりだ。何か新しいことを始めるときには、いろいろと「雑音」が耳に入ってくるものだ。「時期尚早ではないか」「手続き上に問題がある」「実現可能なのか」と。特に、3つ目の問いは厄介だ。ある意味、しない、させないための呪いの言葉だ。「必要なのか」という問いに逆転させれば、どうだろうか。「多文化共生の生野区モデル」の構築に向けた、「多文化ふらっと」の今後の取り組みに注目したい。