NPO法人クロスベイス主催の連続公開セミナー「子どもが『よく生きていく』って、どういうこと?~オランダ・北欧の教育に学んでみよう!」が、8月11日(土)午後2時からクロスベイスの事務所で実施されました。
参加者は23名で、小学校の教職員、大学教員、保護者、大学生、区役所職員、生野区こどもサポートネット推進員、大手民間学習塾の幹部職員、NPO関係者など多彩な顔ぶれとなりました。
今回はゲストに教育コーディネーターの武田緑さんと、生野区で子育てをされている、いくすく子ネクトの中峯佳代子さん、東京大学大学院の白凛さんのお2人をお招きしました。
まず武田さんより、オランダと北欧の教育実践についての報告がありました。オランダのピースフルスクールプログラムや、スウェーデンのデモクラティックスクールなど、多様な実践が紹介されました。デモクラティックスクールでは、将来の準備のために足りないものを補っていくというよりも、「子どもが子ども時代を謳歌できること」が大切にされているとのこと。デモクラティックスクールの理念として、子ども自身が自分の欲求・ニーズ・表現したいこと・したい生き方を掴むことができるという、「自分自身にアクセスできること」が大事にされていることも印象的でした。
ピースフルスクールプログラムでは、授業だけでなく、学校内での子ども同士のトラブルの解決も自分たちで行なっていくための理念の学習や問題解決の仕組みも含めたパッケージとして提供されているということでした。
その後の対談では、白さんと中峯さんから、日本や生野区で子育てをするときに感じる悩みや葛藤が率直に語られました。子どもの主体性や個性を尊重することをもちろん大前提としなながらも、「社会」のなかで子どもが生きていくときに、これは身につけておいたほうがよいのではないか、と考えることもあり、その間の葛藤がある、というリアルな思いが語られ、武田さんの報告にあった実践がどこまで日本で可能なのか、といった疑問も出されました。
フロアを交えた対話でも、子どもを取り巻く環境や生野区の子育てと教育に必要なものについて、活発に意見が交わされました。具体的なそれぞれの現場の実践や体験に基づいた、さまざまな語りがありました。例えば、生野は地域のおとな同士、またおとなと子どもとが近いことで、子どもの多様な学びにつながったという事例や、読解力が伸びていないために、多くの教科で教科書や問題文が読めていない子どもとの学習のありかたなど、いま生野区で起こっていること、実践されていることに裏打ちされたエピソードや意見が交わされました。
代表理事の宋より、これまでセミナーなどで話し合われてきた理想の教育を生野区で「まちの学校」として、いちど実践してみるのも面白いと思う、との提案もありました。
議論の内容が面白かったことはもちろんですが、なにより参加者同士のつながりが新たに生まれ深まる機会となりました。
クロスベイスでは、今回のセミナーでさらに深まった関係や提起された議論を活かし、次回のセミナーや今後の企画にもつなげていきます。