私の「先生」
中﨑 京香
もともと、自分より年下の子たちと関わるのは得意ではありませんでした。高校生になるまでをアメリカやドイツで過ごした私は日本の学校では当たり前の「部活」に入ったことがありません。幼稚園から習っているフルートの技術を磨くために中学校も高校も吹奏楽部には入らず、あえて市の吹奏楽団に所属していた私は常に最年少でした。自分よりも年下(または後輩)の子たちと関わったことがないまま、大学生になりました。英語専攻に入った私は、せっかくなら英語を極めようと英語ディベート部に入部しました。1年生の頃は熱心に取り組んでいましたが、一旦入賞したり優勝したりすると、途端にその結果に満足してしまってそれ以上に努力することができなくなったのです。必死に練習する同期に少しずつ置いて行かれるようになって、後輩を持つこともなく1年生の終わりにはやめてしまっていました。部活もなく、ただなんとなく過ごしていた2年生の冬、漠然と現状に不安を感じていた時、以前クロスベイスで講師として働いていた大学の先輩に「クロスベイスで講師を募集しているんだけど、どう?」と紹介していただきました。はじめは「年下の子たちとの接し方を知らないけど先生なんてできるだろうか…。」と心配でしたが、実はこれが本当に楽しくて気が付けば約1年半(!)、講師として子供たちと過ごしています。
大学二年生の冬から今まで、ずっと同じ2人の生徒を担当しています。最初の頃、授業の時間は勉強だけで他愛ない会話をするのは雑談の時間になってから。融通のきかなかった私は、まるで集団授業の塾のようにしなければならないと思っていました。でも、実際は学校のことや趣味についての話が止まらなくなったり、先週の宿題をやっていないために授業で一緒にそれを解いたりして、授業があまり進まないことも多々ありました。自分の考えた通りに進められず、自分に対して不甲斐なさを感じていました。そんな時、ある月の講師ミーティングで「クロスベイスは勉強を教える場所でもあるけれど、それと同時に子供たちの居場所となるような、そんなところにしていきたい。」と宋さんがおっしゃっていました。勉強を教えることばかり考えていた私ははっとしました。「なんか楽しかったし、また来週も来ようかな。」と思ってもらえるような雰囲気づくりが大切だと気づきました。いろいろ試した結果、授業中に雑談を交えたり、こまめに休憩をとったりする。きっちりしたタイムスケジュールは組まない。その日の生徒たちに一番合った授業の進め方を毎週見つけていく。やっとそれができるようになったのは去年の年末でした。
今年の春、就職活動などでクロスベイスを数か月お休みさせていただきました。ドキドキしながら7月に2人に会ったとき、「先生が戻ってきてくれてよかった~」「戻ってくるのを楽しみにしてました!」そう言ってくれました。そして数か月ぶりの授業を終えて、「やっぱり先生って面白いし、授業も楽しい」それを聞いたとき、嬉しくて涙が出そうになりました。2人の先生をできて、関われて、本当によかった。私に人と向き合うことの難しさ、関わることの楽しさを教えてくれたのは、子供たちでした。確かに私は勉強を教える「先生」ですが、それと同時に子供たちは私の「先生」として私自身を成長させてくれました。そんな彼らと冗談を交えながら話したり、かと思えば秘密を打ち明けてくれたりするクロスベイスでの一瞬一瞬が本当に楽しいです。
お見送りの時は必ず、「来週も絶対来てね!」と言うことにしています。2人はいつも「はーい」「また来週も来ます!」と答えてくれます。「なんか楽しかったから来週も来ようかな」と思い続けてもらえるような優しい居場所になれるよう、これからも子供たちと真剣に向き合い続けていきます。